事故で四肢麻痺になったバークハートさん。下半身は完全に麻痺していますが、肩と二頭筋の運動は少しだけできる「C5」レベルの麻痺患者です。
脳に埋め込まれたチップには、こんな感じで機器が接続されています。チップが埋め込まれている位置は、脳の運動野と呼ばれる領域。正確な場所を発見するまでに、今回の研究期間の半分を費やしたとのこと。
バークハートさんは脊髄を損傷したため、脳からの信号が四肢に伝わらない状態です。そこで脳信号を外部に出力し、機器を介して信号を直接腕に送ることで、脊髄伝達を回避して運動を可能にしているわけです。
脳の信号をデコードしているのは、研究に参加しているバテル記念研究所が開発した特殊なソフトウェア。バークハートさんは毎週にわたって、このソフトウェアに手を動かすニューロンの発火パターンを入力する作業を続けました。
その結果、バークハートさんは複雑な動きを右腕で行えるようになりました。以下はグラスをつかんで、別のコップに中身を移し替えているところ。
これらの設備は今のところバークハートさんしか使えず、汎用(はんよう)性はありません。さらに研究所でしか使えない状態ですが、研究チームは、どこでも使えるように「設備のモバイル化」を目指すとのこと。今回の研究は初めて四肢麻痺の人が運動機能を回復できた成功例として、同様の障害を抱える人の希望となりそうです。